筋肉には “弾性力” があり、輪ゴムの様に強く伸ばす事で弾性エネルギーを蓄え、それを解放する事で強いエネルギーを外に放出します。
例えば思い切り垂直跳びをする時、誰に教わった訳でもなく深くしゃがみ込んでから跳び上がりますよね?
もしも棒立ちのまま跳ぶ人がいたら “膝神” と呼ばれる類の人だと思ってください。
強い力を発揮しようとする時、人間は本能的に筋肉の弾性力を利用しています。
このゴムの様に筋肉が伸びたら縮む反応を “伸張反射 (SSC)” と呼びますが、実はこの反射をよりうまく利用する事ができれば筋量をあげなくてもより強い力発揮が可能になるのです。
伸張反射とトランジションフェーズ
トレーニングで習得した動きをより実践に近づける為にスピードを上げる必要があり、その中で筋肉の伸張反射が生まれます。
伸張反射をうまく利用する身体の使い方を理解する為には、動作を3つの局面に分けて考える必要があります。
まず、筋肉が伸びていく局面を “エキセントリックフェーズ” と呼びます。
次に、筋肉が縮む局面を “コンセントリックフェーズ” と呼びます。
そして、伸張反射をより強く引き出す為のミソとなるのが “トランジションフェーズ” と呼ばれる局面です。
トランジションフェーズとは、エキセントリックフェーズとコンセントリックフェーズの間に生まれる “切り替えの局面” です。
この切り替えの局面は “移行期” を意味し、どんなに速く動いても必ず “一瞬の間” が生まれます。
例えエキセントリックフェーズで強く筋肉を伸ばせたとしても、トランジションフェーズでバランスを崩してしまっては、そのエネルギーをコンセントリックフェーズに繋げる事はできません。
このトランジションフェーズの精度を上げる事が、より強い伸張反射を引き出すミソになるのです。
ドロップスクワットで強化!
垂直跳びをする時をイメージしてください。
一度深くしゃがみこんでから高く跳び上がると思いますが、トランジションフェーズで背中が丸まって姿勢が崩れたり、完全に止まってしまったら高くは跳べないと思います。
例えばパチンコ (Yの字の棒にゴムが付いてて玉を跳ばすやつです) でより玉を遠くに飛ばしたい時に、ゴムを引っ張り離す瞬間に軸を握っている手がグラついていては玉は真っ直ぐ強く跳ばないのと同じ感じです。(ん、例えが微妙?)
兎に角、トランジションフェーズでは “安定性” が重要になるのです。
トランジションフェーズに注目した時に、弾性エネルギーが失われない様にする為には次の2つの条件があります。
◆ 安定性を保つ事
◆ 時間を短縮する事
この移行期であるトランジションフェーズの安定性を鍛えるトレーニングには “ドロップスクワット” が非常に有効です。
まずは強い筋肉の伸張反射を生み出す為に、このトランジションフェーズでの安定性が必要不可欠です。
具体的には『背骨から骨盤のバランス安定させ、しっかりと負荷を殿筋群を中心とした脚部の筋肉で受け止めること』 がポイントになります。
あとは“できるだけピタッと止まる事” です。
また難易度は上がりますが、シングルレッグのドロップスクワットも非常に重要です。
ドロップスクワットを行いトランジションフェーズの安定性を鍛えたら、コンセントリックフェーズに入るまでの時間を短くしていく事で “より強い伸張反射” を引き出す事ができます。
逆にトランジションフェーズが長くなると、弾性エネルギーが失われ高く跳ぶことはできません。
まとめ
トレーニングで習得した動きをより実践に近づける為にスピードを上げる必要があり、その中で筋肉の “伸張反射” が生まれます。
筋肉の弾性エネルギーを利用する伸張反射を引き出す為には “トランジションフェーズ” が安定している事が重要になります。
うまくエキセントリックフェーズからコンセントリックフェーズに弾性エネルギーを移行させる為に、ドロップスクワット “トランジションフェーズでの安定性を鍛える” トレーニングが有効です。
動作をこの様に3つのフェーズに分けて考える事でより強い力発揮ができる身体の使い方を習得してください。