結果ではなく過程にコミットするパーソナルトレーニングジム。トレーニング未経験者大歓迎!/広尾駅・白金高輪駅。

2022.02.07(月)  津田鉄平

IAP呼吸法

IAP呼吸法

こんにちは!ストレッチトレーナーの津田です。

皆さん、呼吸について意識していますか?

人は一日に2〜3万回の呼吸をしています。当然運動などを行う人はそれ以上の回数になります。これを一ヶ月もしくは一年に換算すると、とてつも無い回数となりますね。これだけの回数を日々行っている呼吸、おろそかにすると体内に供給される酸素量が減るだけでなく、姿勢の歪みや自律神経の乱れ、そこから免疫力の低下など様々な悪影響が広がってしまいます。これは「深呼吸を行えば良い」と言う単純な話ではありません。無理やり大きく吸おうとするだけでは根本的な呼吸の質は変わらず、そもそもの呼吸の考え方や行い方つまり概念から変えていかなければ実質的に良い呼吸には改善しないのです。

そこで登場するのが今回ご紹介する「IAP呼吸法」です。最近また一段と注目されていますね。注目されるきっかけとなった書籍は「スタンフォード式 疲れない体」(山田知生著、サンマーク出版)です。呼吸に限らず、科学的エビデンスなどを用いて非常に説得力のあるメソッドが多く紹介されているので、まだ読んだことがない方は是非ご一読下さい。

現代人の呼吸の乱れ

私はストレッチトレーナーとして日々お客様のお身体をケアしています。その際、お客様をストレッチする中で注目することが大きく2点あります。それは「呼吸」と「脱力」です。「呼吸」と「脱力」がうまく実践できていると筋肉の伸び感が効率良く高まり、ストレッチの効果が最大化します。この2点の要素は非常に大きく関わっており、どちらか一方の質が落ちるともう一方の質も落ちる、反対にどちらか一方が正しく実践できているともう一方の質も担保されていると言うケースが非常に多いです。

これは何もストレッチ中に限った話ではなく、私達が日々生活する中でも同様のことが言えます。例えば、激しい運動をして「呼吸」が乱れている時、身体の各部位に力みが生じているつまり「脱力」とは対極の状態にある。デスクワーク中に集中してパソコンのディスプレイを覗き込んでいる場面において肩に力が入っているつまり「脱力」が成されておらず、同時に「呼吸」も浅くなっている。など、多くのケースにおいてこの2つの要素が連動していることが見受けられます。

複雑な現代社会を生きる我々の生活において、人間関係、仕事、諸々の事柄に関して、フィジカル的にもメンタル的にもストレスを感じる場面が一切無いと言う方は少ないのではないでしょうか。ストレスが生じる場面は誰しも持っている、それはつまり「呼吸」と「脱力」の質が落ちている可能性は誰にとってもあり得ると言うことなのです。

乱れた呼吸が招く悪影響

呼吸が乱れる特に浅くなることで、私達の身体には様々な悪影響が及ぼされます。低酸素状態による脳の機能低下、めまいや頭痛などをはじめとした自律神経の乱れ、ミトコンドリア(細胞内小器官)への酸素供給不足とエネルギー産生の低下に伴う倦怠感や疲労の蓄積、肩コリや腰痛と言った慢性痛の発症、集中力の低下、など挙げればキリがありません。

特に私はストレッチトレーナーとしてお客様のお身体をメンテナンスする機会が多いこともあり、肩コリや腰痛などの慢性痛、お仕事の忙しさによる慢性疲労に悩まされている方は非常に多く、同時にそう言った方は「呼吸」の質も低下しているケースが散見されます。そして、「呼吸」の質が低下した状態が長期的に続くと体調を崩してしまうことも珍しくありません。心身の健康と「呼吸」が密接に紐づいていることは、私の経験則から見ても間違い無いと言えます。

呼吸を改善「IAP呼吸法」とは

では、その大切な呼吸を改善するにはどうしたら良いのか?ここで登場するのが「IAP呼吸法」です。

「IAP」とはIntra Abdominal Pressureの略で、「腹腔(ふくこう)内圧(腹圧)」のことを指します。人間の腹部には「腹腔」と呼ばれる胃や肝臓などの内臓を収める空間があり、この腹腔内の圧力が「IAP」です。「IAPが高い(上昇する)」という場合は、肺に空気がたくさん入って腹腔の上にある横隔膜が下がり、それに押される形で腹腔が圧縮され、腹腔内の圧力が高まることで外向きに力がかかっている状態を指します。

 腹腔の圧力が高まることで体の軸、すなわち体幹と脊柱という「体の中心」が支えられて安定し、無理のない正しい姿勢を保つことができるのです。 そうして体の中心を正しい状態でキープすることで、中枢神経の指令の働きが良くなり体の各部と脳神経がうまく連携し、余分な負荷が減るという理論です。体の歪みは、中枢神経を乱すトリガーとなる危険な状態です。そして、体の歪みと密接に関係しているものこそ「体内の圧力」つまり「IAP」なのです。

このIAP呼吸法は腹式呼吸やドローインと混同されがちですが、別物です。腹式呼吸やドローインは「おなかを引っ込める」ことを重視するのに対し、IAP呼吸法では「おなかを膨らませる」ことを維持する点に重点を置きます。私の個人的な見解としては、腹式呼吸やドローインが悪いと言うわけでは決して無く、目的が違うように感じます。つまり、腹式呼吸やドローインの目的は「腹横筋(おなかのインナーマッスル)を機能させる」に対し、IAP呼吸法は「腹圧を高めることで体幹を安定させる」と言う違いがあります。私は長年格闘技をやってきた中で慢性的な腰痛が生じることがあるのですが、腹式呼吸やドローインよりもこのIAP呼吸法を実践することで、腰痛に改善傾向が見られることを体感しています。

「IAP呼吸法」の実践方法

①耳と肩を結ぶラインが縦一直線になるように椅子に座る。おなかと太もも、膝裏を90度にする。

②両手の親指以外の4本の指先をおなかに向けて膝の上へ置く。そのまま下っ腹までスライドする。(両手の指先が下っ腹に軽く差し込まれる位置まで)

③5秒を数えながら鼻から目いっぱい息を吸い、指先を押し返すようにおなかを膨らませる。その際に肩が力が入らないようにリラックス状態をキープする。(すると横隔膜が下がりやすくなる)

④次に5秒を数えながら口から息をゆっくりと吐く。その際、腹圧(おなかの圧)を緩めないように、手の指先をおなかで押し返す感覚は保ったまま行う。これを5回繰り返す。

まとめ

この「IAP呼吸法」を実践することで慢性痛の改善や精神の安定など、健康的な身体作りに役立つことを自身の経験からも強く感じています。人によって合う合わないは当然あるものの、一度生活の中に取り入れていただき実践していただく価値はあると考えていますので、是非とも試してみて下さい。

今後も皆さんの心身の健康作りのお役に立てるよう、努めて参ります。最後までお読みいただきありがとうございました。

ストレッチトレーナー 津田鉄平

この記事を書いたトレーナー
津田鉄平

津田鉄平

1984年11月9日生まれ。 元プロキックボクサーであると同時に、パートナーストレッチと食事管理を中心としたパーソナルトレーナーとして、多方面に渡るクライアントを担当。 栄養学や食事管理にも精通しており、自身の経験をベースとした身体作りや体重コントロールの知識を保有。 自身のトレーニングには、フィジカルのみならずビジョントレーニングやメンタルトレーニングも取り入れており、 心と身体のバランスを重要視したコーチングに長けている。

津田鉄平のトレーナー紹介ページへ →

カテゴリー

新着記事

人気の記事